経営課題への処方箋 Vol.4
「事業承継・資産承継」について、「経営の地図」の可視化、共有化をすることで期待できる効果

経営者向け

今回は、企業経営における今日的課題の2つ目である「事業承継・資産承継」について、「経営の地図」の可視化、共有化をすることで期待できる効果をお伝えします。

バックナンバー
経営課題への処方箋 Vol.1「経営の地図」とは?
経営課題への処方箋 Vol.2「経営の地図」の可視化、共有化
経営課題への処方箋 Vol.3「トップマネジメント層の育成」における【経営の地図】の可視化、共有化で期待できる効果 

 

前回のおさらいになりますが、「トップマネジメント層」とは社長、役員層のことを指します。「トップマネジメント層への育成」とは、事業承継予定者、部長層、課長層を「トップマネジメント層」に育てていくことを言います。前回は、部長層、課長層を経営層に育成する部分にフォーカスを当てましたが、今回は、事業承継予定者経営層に育成する部分にフォーカスを当てたいと思います。 

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事業承継とはそもそも何をすることなのか?

独立行政法人 中小企業基盤整備機構が提供している冊子に事業承継について下記の記載があります。(以下引用) 

 「事業承継とは、“現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ” を行うことですが、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(人・物・金・知的資産)を上手に引継ぎ、承継後の経営を安定させるために重要です。 

「事業承継=税金対策」と見られがちですが、相続税対策は事業承継の取り組みの一つに過ぎません。」(独立行政法人 中小企業基盤整備機構 『中小企業経営者のための事業承継対策(令和4年度版)』P10) 

このように、相続税対策(資産承継)は事業承継の取り組みの一部に過ぎず、「目に見えにくい経営資源(強み)=知的資産」の承継が事業承継の本質といっても過言ではありません。 

これから事業を承継する事業承継予定者の立場から見た場合、これまで企業を成長させてきた現経営者がどのような想い(理念)で経営の舵をとり、さまざまな判断をしてきたのか。また、承継する自社が創業・設立してからこれまでに蓄積してきた魅力(強み)にはどのようなものがあるのか。この2つが特に気になるところです。 

ところが、前者の想い(理念)については、現経営者と改まって直接話す機会は少なく、現経営者が親ともなるとその機会は皆無です。また、後者の魅力(強み)=知的資産は上記にも記載がありますが、貸借対照表には表れてこない目に見えにくい経営資源です。つまり、客観的に可視化することが難しい内容なのです。

知的資産とは?

私は、知的資産を貸借対照表に表れる物的資産(モノ・カネ)と併せて下表のように分類しています。 

【経営の地図】を可視化・共有化することで得られる効果

ここで改めて、【経営の地図】の全体像を見ていただきたいと思います。 

前々回の連載でも触れましたが、このシートは、経営の現在地から将来のありたい姿の道程(戦略)をストーリー化することから、「戦略ストーリー可視化シート」と呼んでいます。 

戦略ストーリーを可視化するシート

 

「戦略ストーリー可視化シート」を可視化する流れや観点は前々回の連載で触れました(下図)。 

戦略を可視化する10項目

 「戦略ストーリー可視化シート」を、現経営者のオブザーブのもと事業承継予定者と、将来、事業承継予定者を支える次世代リーダー達で可視化・共有化することで、前回触れたそれぞれの「視座」「視野」「視点」に働きかけることができるとともに、これまで企業を成長させてきた現経営者がどのような想い(理念)で経営の舵をとり、さまざまな判断をしてきたのか。
 また、承継する企業が創業・設立してからこれまでに蓄積してきた魅力(強み)にはどのようなものがあるのか。の2つを支援者の客観的な目線を入れつつ可視化することが可能になるのです。つまり、この可視化プロセスを経て、企業の中だけで客観視することが難しい事業承継の核になる部分を可視化、共有化することが可能になるのです。 

次回のトピック

次回は、企業経営における今日的課題の4つ目である「ミドルマネジメント層の育成」について、「経営の地図」の可視化、共有化をすることで期待できる効果をお伝えします。 

執筆者


國谷 真(くにたに まこと)中小企業診断士
アート・オブ・ロジック株式会社 代表取締役

『経営コンセプト』Story for Success
『社名の由来』<ロジック>:経営の「原理原則」と「論理」を踏まえ、<アート>   :「戦略ストーリー」の「可視化・共有化・実現化」を支援します