経営課題への処方箋 Vol.3
「経営の地図」の可視化、共有化をすることで期待できる効果

経営者向け

今回は、企業経営における今日的課題の1つ目である「トップマネジメント層への育成」について、「経営の地図」の可視化、共有化をすることで期待できる効果をお伝えします。

バックナンバー
経営課題への処方箋 Vol.1「経営の地図」とは?
経営課題への処方箋 Vol.2「経営の地図」の可視化、共有化

 

トップマネジメント層であるリーダーの役割

「トップマネジメント層」とは社長、役員層のことを指します。「トップマネジメント層への育成」とは、事業承継予定者、部長層、課長層を「トップマネジメント層」に育てていくことを言います。今回は、特に部長層、課長層を経営層に育成する部分にフォーカスを当てたいと思います。

    

まず、トップマネジメント層であるリーダーの役割について整理します。
リーダーには大きく2つの役割があります。

1つ目が「リーダーシップ」…チームを束ね、チームを一つの方向に動かすこと。
2つ目が「マネジメント」…チームで成果を出すこと。

この2つの役割をPDCA(計画・実行・評価・是正)を使って説明すると、「リーダーシップ」は計画を立て、立案するプロセスにおいてチーム内で情報共有や意思疎通を図ることであり、
「マネジメント」は計画の実行→実行した結果の評価→計画の是正を通じてチームで成果を出すことを言います。
リーダーには、仕事の大小に関わらず、常に以下の流れに沿って、チームでコミュニケーションを図り、チームで成果を出すことが求められます。
①「利害関係者の要望・思惑」「使用可能な経営資源」等に関する情報の収集
②情報の整理、分析と判断において「思考のバランス」をとる
③P(計画)を立案する
④P(計画)をD(実行)する
⑤D(実行)した結果をC(評価)する
⑥C(評価)した結果を踏まえてP(計画)をA(是正)する
ここで、②で出てきた思考バランスについて具体的に解説します。

リーダーに必要な思考バランスとは?

「思考のバランス」とは、下図の下段「手段」「部分」「主観」「短期」「結果」の5つの観点と上段の「目的」「全体」「客観」「長期」「原因」の5つの観点でバランスをとることを指します。この「思考のバランス」をとることが、経営の正しい判断をする上で非常に重要なことなのです。
※客観=相手視点又は第三者視点で物事を捉える/主観=自分視点で物事を捉える

   

チームに属するメンバーは下段の「手段」「部分」「主観」「短期」「結果」の5つの観点から思考できれば及第点ですが、チームのリーダーはそれだけでは足りず、上段の5つと下段の5つの両方の観点から情報を整理、分析し方向性を判断する必要があります。言い換えると、5つの思考軸の真ん中(上図中央のグレーの円)で考え判断する必要があるということです。

さらに言うと、連載第1回でリーダーが「目的」をきちんと伝えることの重要性に触れましたが、上図において「目的」は図の最上位に据えられています。これは、「目的」がすべての思考の観点の最上位に位置するという意味であり、「目的」が決まらないと「手段」を初めとして、他の思考の観点が定まらないという意味でもあります。

【経営の地図】を可視化・共有化することで得られる3つの効果

ここで改めて、【経営の地図】の全体像を見ていただきたいと思います。
前回の連載でも触れましたが、このシートは、経営の現在地から将来のありたい姿の道程(戦略)をストーリー化することから、「戦略ストーリー可視化シート」と呼んでいます。

戦略ストーリーを可視化するシート
再掲した「戦略ストーリー可視化シート」を部長層、課長層の次世代リーダーに可視化、共有化することで、それぞれの「視座」「視野」「視点」に働きかけることができます。
具体的には下記の3つの変化を期待することが出来ます。
「視座(視る位置)」が高くなる。
「視野(視る範囲)」が広くなる。
「視点(視る観点)」が増え柔軟になる。
この「視座」「視野」「視点」が良い方向に変化するのは、「戦略ストーリー可視化シート」を可視化、共有化する中で次世代リーダーそれぞれの「思考バランス」に変化を与えることができるからです。
「戦略ストーリー可視化シート」を可視化する流れや観点は前回の連載で触れました(下図)。

戦略を可視化する10項目
「戦略ストーリー可視化シート」の項目を共有化するプログラムの中に、5つの思考バランスを鍛える内容を豊富に盛り込んでいます。
よって、ファシリテーターが次世代リーダーをファシリテーションし「戦略ストーリー可視化シート」を部門横断的に可視化、共有化することで、それぞれの「思考のバランス」において上段の思考要素も持てるようになり、次世代リーダーそれぞれの「視座」「視野」「視点」に良い変化を与えることが期待できるわけです。

次回のトピック

次回は、企業経営における今日的課題の2つ目である「事業承継・資産承継」について、「経営の地図」の可視化、共有化をすることで期待できる効果をお伝えします。

執筆者


國谷 真(くにたに まこと)中小企業診断士
アート・オブ・ロジック株式会社 代表取締役

『経営コンセプト』Story for Success
『社名の由来』<ロジック>:経営の「原理原則」と「論理」を踏まえ、<アート>   :「戦略ストーリー」の「可視化・共有化・実現化」を支援します