コロナ禍のいま、親族内承継に取り組むべき理由とは

事業承継

事業承継といった言葉は耳にしたことがあっても、実際にどのように進めれば良いかわからないという方も少なくありません。本コラムでは、親族内承継を検討中の方に向け、このコロナ禍で事業承継に取り組むべき理由と気を付けるべきポイントについて解説します。

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親族内事業承継の手引書 -時期/進め方などの概要を解説-

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事業承継の現状からみる、早めに事業承継に取り組むべき理由

最近は中小企業の事業承継問題についてクローズアップされることが増えてきています。事業承継の現状についてみていきます。

事業承継の現状

中小企業庁「中小企業実態基本調査(2020年版)」によると中小企業の4割超が「事業承継を考えていない」という結果となりました。その理由として「まだ事業を譲る予定がない」「後継者が決まっていない」「自社には不要・事業承継の必要性を感じない」などが挙げられています。

事業承継を考えなければ事業承継は進まず、事業の継続性に影響を及ぼします。

中長期に渡って解決しなければならない重要な課題ですが、現状として事業承継の取り組みが進んでいないことがうかがえます。

早めに事業承継に取り組むべき理由①:経営者の高齢化問題

いま事業承継に取り組むべき理由の一つには経営者の高齢化が挙げられます。日本の高齢化社会は年々進行しており、それに伴い経営者の高齢化も進んでいます。

また、中小企業基盤整備機構の調査によると、約3割は生前に事業承継が行われていないようです。事業承継では、「経営理念の承継」など、経営者と後継者との意思の疎通が重要となりますが、生前に十分な準備をもって事業承継が行われない場合、承継後に思わぬ問題を引き起こすことになりかねません。

(出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構 「事業承継実態調査 報告書」生前の事業承継の有無より)

早めに事業承継に取り組むべき理由②:事業承継には時間がかかる

二つ目の理由は事業承継に時間がかかるためです。

事業承継はおおよそ5~10年の時間がかかるといわれています。中長期に渡って行う内容となるため、経営者は時間に余裕をもって取り組むことが重要です。

中小企業庁の調査によると、事業承継のタイミングがちょうど良かったと応えた割合が最も多かったのは40~49歳の経営者でした。

(出典:中小企業庁 「中小企業白書」 事業承継時の現経営者年齢別の事業承継のタイミングより)

また、50 歳代以上の経営者のうち半数以上が「もっと早い方がよかった」と回答していることから、30 歳・40 歳代で承継するように準備することが望ましいといえます。

(出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構 「事業承継実態調査 報告書」 事業承継のタイミングについてより)

なお、中小企業基盤整備機構の調査によると、経営者の現在年齢が高くなるほど『家族・親族への承継』を意識しています。一方、前述のとおり後継者としては30歳代・40歳代で後継指名してほしいと望んでいます。

家族への承継だからと先延ばしにせず、事業の中長期経営課題として計画を立て、後継者の育成期間も意識した上で、タイミングよく後継者にバトンタッチする必要があるのではないでしょうか。

(出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構 「事業承継実態調査 報告書」 事業承継先についてより)

コロナ禍こそ親族内承継に取り組むべき理由

上記二つの理由から、いま(できるだけ早く)事業承継に取り組むべきである理由を解説しました。 続いて、新型コロナウイルスの影響から経営が不安定となっている企業も多い『いま』、親族内承継に取り組むべき二つの理由と、その手段について解説します。

有事こそ後継者を育てる絶好の機会

一つ目の理由は、経営が大変な『いま』の時期こそ、これからの経営を担う後継者を育成するために適したタイミングであるということです。

新型コロナウイルス感染症の影響により、従来の働き方から大きな変化が起きています。

会社としては一つの転換期ともなりえるこの時期に、後継者の育成を行い、育成に重要な修羅場を経験させることで、良い経営者が育つ絶好の機会であるとも考えられます。

コロナ禍だからこそ株式移転を考える

税務的な視点から見てもコロナ禍の事業承継にはメリットがあるといえます。

事業承継にあたり、財産権を移転する際は、一般的に財産価値が低く、株価が下がっているタイミングであるほうが税務上は承継しやすくなっています。

そのため、収束の見えないコロナ禍で不況となり、株価が下がっている企業や事業者にとっては財産承継上のメリットが大きく、財産権を移転するには良いタイミングであると考えられます。

コロナ禍の先行き不透明な状況だからこそ、事業承継の一環として株式移転についてこの機会に深く考えてはいかがでしょうか。

親族内承継を成功させるために気を付けるべきポイントとは

コロナ禍だからこそ親族内承継を取り組むべき理由について紹介しましたが、ここでは親族内承継を成功させるために気を付けるべきポイントについて解説します。

事業承継の流れ

事業承継では検討段階~具体的作業への着手までの流れを大別すると、①会社の状況把握 → ②後継者候補の選定 → ③事業計画書の作成 → ④関係者への説明 → ⑤経営改善 → ⑥具体的作業への着手といった流れになります。

この事業承継の流れの中でも特に注意していただきたいポイントを以下で紹介します。

気を付けるべき4つのポイント

上記でもご紹介した、事業承継の一連の流れの中で特に気を付けるべき4つのポイントについて簡単に紹介します。

-株式の移転準備

株式が分散してしまうと、代表者の議決権が少なくなり、会社に対する影響力の低下から安定性を揺るがす要因ともなりかねません。そのため、後継者は株主総会の決定権を確保すべく、できれば特別決議の可決要件である2/3以上の議決権をコントロールできるようにしておく必要があります。

-相続対策

経営者個人が保有している株式は預金等と同じく財産となりますので、資産配分に当たり民法上の公平性を考慮した上で分配を行う必要があります。

-ステークホルダーへの周知と信頼づくり

社外の取引先などのステークホルダーへの周知や信頼づくりは後継者のためにもしっかりと行っていく必要があるため、信頼づくりには十分な期間を確保できるようにすることが重要です。

-個人保証や担保の整理

経営者や親族などの個人が当該会社の融資について保証する場合、その経営者などが負う保証のことを一般に「個人保証」といいます。これらを事業承継後も経営者が抱えてしまっている場合、経営者やその親族にとっても大きな負担となってしまうため、個人保証や担保も事業承継の際に後継者へ引き継ぐ必要があります。

これらの気を付けるべきポイントの詳細を含めた親族内事業承継の進め方をまとめた手引書を用意しています。今後親族内事業承継を検討する可能性のある方はぜひお手元においていただき、ご活用ください。

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