定年延長の義務化!シニア人材の活用を進めるうえで気を付けるべきポイント

組織設計・人事評価制度

少子高齢化による労働者不足により、各企業でシニア人材の活用が注目されています。シニア人材の積極的活用は労働力確保以外にも多くのメリットを享受できる一方、注意すべき点も多々あります。本記事では、シニア活用を検討されている人事担当者様向けに、活用のメリットと制度導入に向けた注意点について解説します。

必要性が高まるシニア人材の活用

近年、少子高齢化による労働人口の減少が問題視されており、これから多くの企業は「労働者不足」という課題に直面する可能性が高くなっています。労働関連法が改正され定年が延長になったこともあり、企業ではシニアの活用に注目が集まっています。

10 年後には従業員の 3 割が 50 歳以上になる実態

企業における従業員の高齢化も進んでいます。HR総研の「シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果」によると、 10 年後、半数以上の企業で従業員の 3 割以上は 50 代という状態となり、割合は年々増加し続けるといわれています。シニア人材の活用は、労働力不足の対応策として重要となってくることが予想されます。
出典:ProFuture株式会社/HR総研 「シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果」

70 歳以上まで働きたいニーズが増えている

また、雇用される側の従業員もできるだけ長く働きたいという意見が多くなっています。
内閣府の「令和 2 年高齢社会白書」によれば、 60 歳以上の男女にアンケートを取った結果、実に90% 以上の方が 70 歳以上まで働きたいと回答しており、より長い期間働きたいニーズが高まっていることがわかりました。

2025 年には定年 65 歳以上が義務化

高年齢者雇用安定法の改正により、 2021 年 4 月から各企業に 70 歳までの就業機会確保への努力義務が設けられました。また、 2025 年度からは企業の定年 65 歳が義務化されることも決まっており、シニア人材の活用を後押しする形となっています。

企業側も積極的なシニア活用に対応しはじめている

法改正の影響もあり、企業側のシニア人材の活用への対応も進んでいます。

HR総研の「シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果」によると、企業全体の約 85% が 65 歳までの何らかの雇用制度を導入しており、うち 14% は定年の引き上げに踏み切っていることがわかりました。 70 歳までの就業機会確保の努力目標が義務化されたことにより、今後各企業の対応はさらに活発化することが予想されます。    

出典:ProFuture株式会社/HR総研 「シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果」
出典:内閣府「令和2年版高齢社会白書」

シニア社員を活用するメリット

シニア人材活用は、労働力不足の課題や労働者のニーズ、国の政策に後押しされ広がりつつあります。それでは、シニア人材を活用する企業側のメリットはどこにあるのでしょうか。ここでは企業にもたらされる3つのメリットについてご紹介いたします。

人手不足の解消

メリットの 1 つ目「人手不足の解消」です。少子高齢化により労働人口は低下し続けており、これからもますます深刻化することが予想されます。若手人材を確保できなくなることは、いずれ企業側で機能不全を起こすことにつながります。シニア人材の積極的活用は、人手不足をすみやかに解決する有効な手段といえます。

豊富なネットワーク、知見の活用

2 つ目はシニア人材のもつ豊富な人的ネットワークや知見を活用できる点です。シニア人材はこれまでの実績からなる豊富な人的ネットワークや知見を持っています。シニア人材を活用することで新たな業務への対応や企業の競争力向上を図ることも可能となります。

技術継承、若手育成

3 つ目は技術継承や若手育成です。 10 年ほど前、第 1 次ベビーブームで生まれた世代が 60 歳を契機に一斉に退職したことで、優秀なノウハウを持った技術者が大量にいなくなり、技術レベル低下が発生したことで企業に大きなダメージを与えた事象がありました。このような問題は長期にわたりシニア世代を雇用することで解決が可能です。時間をかけて若手への技術継承や育成が可能となるため、企業全体の技術レベルを保つことにつながります。

再雇用で起きがちな問題

シニア人材は企業にとって多くのメリットをもたらしますが、活用にあたり多くの企業が再雇用という形態を取るケースが多く、そこにはデメリットも存在します。本章ではシニア世代の再雇用における代表的な課題について解説します。

シニア人材のモチベーション維持

1 つ目は、シニア人材が働くうえでのモチベーションの維持です。シニア世代を再雇用する場合、それまでより大幅に条件が下がることがほとんどです。年収や権限など多くの面でこれまで以下の条件で働かざるを得ないため、どうしても仕事に対するモチベーションは下がり、生産性が低下することも考えられます。

シニア人材を再雇用する場合、これまでとの業務や条件の違いについてしっかりと説明を行い、シニア人材側に理解してもらうことが必要です。

体力面での継続勤務の難しさ

2 つ目は体力面の問題です。高齢になればその分体力が落ち、病気などで業務の継続が困難になるリスクが発生します。これまでの勤務条件や労働環境で働くことが困難となる可能性があります。

シニア世代雇用にあたり、体力面・病気リスクなどを考慮したうえで、労働条件を見直す必要があります。

若手との関係性の構築

3 つ目は若手との関係性です。シニア人材に期待する役割の 1 つとして重要なのが若手の育成です。しかし社員全体の中でシニア世代の割合が大きくなるにつれ、若手 1 人に対するシニア世代の人数は増加していきます。よってあまりに熱心な教育となると、若手側が参ってしまう可能性もあります。

また、シニアになれば生産効率はどうしても落ちてしまいます。人数が増えれば企業全体の効率が落ちると同時に若手もそのペースに合わせてしまい、総合的に効率の低下を引き起こす事態になりかねません。

若手とシニアの業務分担を明確化し、若手に悪影響を及ぼさない対策を考える必要があります。

 

人事制度の設計はきらぼしコンサルティングにご相談ください

シニア世代の採用は企業に多くのメリットをもたらす一方、現状の人事制度のままで再雇用を行う場合は課題が多く、シニア世代に対応した見直しが必要といえます。

人事制度の見直しには、ぜひきらぼしコンサルティングにご相談ください。
きらぼしコンサルティングは、各社の組織戦略に合わせて、職位や職務に必要な業務経験や能力・知識・求めたい行動等を整理し、1人1人のキャリアパスが描けるような人事制度設計を行える、人事制度のプロフェッショナル集団です。シニア世代再雇用に向けた制度改革をサポートいたします。