2022年5月号「スタンフォード大学のサステナビリティ・スクールの新設」

シリコンバレーレポート

Delta Pacific Partners 川口 洋二氏がお届けするシリコンバレーレポート。今号はスタンフォード大学に70年ぶりに新設された新学部“サスティナビリティ・スクール”についてご紹介します。

 

「気候変動危機への対策」を目的に70年ぶりの新学部新設

 シリコンバレーのイノベーションを牽引するスタンフォード大学で70年ぶりに新しい学部がこの秋に設立される。グローバルな気候変動危機への対策を加速することを目的にした学部で、「スタンフォード・ドア・サステナビリティ・スクール(Stanford Doerr School of Sustainability)」と呼ばれる。

この学部の設立のため、シリコンバレーの著名ベンチャー・キャピタリストのジョン・ドアと夫人のアン・ドアが11億ドル(約1,400億円)を寄付した。この額はスタンフォード大学の過去最大の寄付額となる。他にもフィランソロフィストが参加して、合計寄付額は16.9億ドルに達した。ジョン・ドアは「ここ10年は将来を決める重要なときで、私たちは全速力で、そして大規模に行動しなければならない」と決意を述べている。

 

図1 新設されるスタンフォード大学サステナビリティ学部のWebサイト

スタンフォード大学

サスティナビリティ・スクール設立に11億ドルを投資!ジョン・ドアとは?

ジョン・ドアは1980年にインテルからクライナーパーキンスに入社、グーグル、アマゾン、サンマイクロシステムズ、インチュイット、ネットスケープ、シマンテック、コンパック等への投資を率いた。シリコンバレーのパイオニア的なキャピタリストで、現在はクライナーパーキンスの会長を務める。

2007年頃からいち早くクリーン・エネルギーの重要性を見出し同分野へのベンチャーへの投資を開始、「不都合な真実」を執筆したアルゴア元米国副大統領をクライナーパーキンスのパートナーに迎え入れた。PitchBook社のデータによるとクライナーパーキンスは2007年から2011年の間に77社ものクリーン・エネルギー・ベンチャーに投資をしている。厳しい投資環境の中、昨年上場した全固体電池のクオンタム・スケープ社やバス等の大型商用車の電化でトップシェアのプロテラ社等へ早い時期から投資、支援した。

図2 アンとジョン・ドア (スタンフォード大学Webより)

ジョン・ドア

 

 

サスティナビリティ・スクールで学べること

スタンフォードのサステナビリティ・スクールは「地球の長期的な繁栄を促進するために最も重要」な分野として8つの分野を挙げている。すなわち、気候変動、地球惑星科学、エネルギー技術、持続可能な都市、自然環境、食糧と水の安全保障、人間社会と行動、人間の健康と環境、である。

サステナビリティ・スクールは3つの柱から成り立っている。一つは自然科学、工学、社会科学といった従来型の学問である。学部、修士/博士課程の大学院が対象になる。まずは大学内から約90名の教員を採用し、10年でさらに60名の教員を追加する予定である。二つ目の柱は複数の学科をまたがる横断的な研究機関である。そして三つ目の重要な柱が、教員や学生がアイデアから世の中にインパクトを与えることができる状態までシームレスに、効果的かつ効率的に進められるように設計されたアクセラレーターである。このサステナビリティ・アクセラレーターは政府、非営利団体と横断的な政策設計を行ったり、その他様々な協力も行う。

現在、具体的なカリキュラムを作成中とのことで、9月1日のスタートが楽しみである。経営学を学ぶビジネス・スクールと同様に、これからはサステナビリティ・スクールが広まっていくのかもしれない。

(以上)