中小企業のための新規事業の進め方(第8回)
~ビジネスプランの構成~

事業計画

さて、今回も前回に引き続いてビジネスプランについて解説をします。前回は、ビジネスプランの瑠璃用シーンを想定しました。新規事業に対する従業員の理解と協力を得るため、資金調達先やビジネスパートナーへの協力を求めるため、ビジネスプランの説明が必要になります。そして、そのような関係者への説明で使われることを念頭において、今回はビジネスプランの内容を解説します。

1.ビジネスプランの構成

ビジネスプランに記述する主な内容は以下の6項目にまとめられます。詳しく解説していきます。
・「サマリー」
・「事業の概要」
・「市場分析」
・「事業(展開)戦略」
・「収支計画」
・「課題」

(1) サマリー

これは全体の要約になります。パワーポイントでつくる場合には、最初の1-2スライドが該当します。まず、一番大切なビジネスコンセプト(誰に・何を・どのように提供するか)、特に特徴(自社の優位な点)が端的にわかるように記述します。そして、事業の理念や理由(なぜやるのか?)を記述します。要するにこの部分だけで相手に端的に理解されることが必要です。そして相手に興味を持ってもらわなくてはなりません。

なお、製品の試作品やサービスの試行提供が上手くいった場合には、このサマリーでアピールします。試行実施結果によって成功見込みがあるという根拠が示せるからです。
聴き手の側は、初めて聞く企画には、まず疑いを持ちます。「その事業は上手くいくのか?(儲かるか、本当に事業ができるのか?)」「なぜその事業をするのか?」という聴き手の疑問を想定しておいてください。この疑問に対する最も有効な説明は、試行結果での顧客の反応を提示することになります。

できれば、15秒程度でビジネスコンセプトを話し、更に15秒で事業をする理由と試行実施結果を端的に話せるようにしてください。
米国の起業家はエレベーターピッチをします。エレベーターピッチとはエレベーターに乗り合わせた約30秒程度の時間で、自分のビジネスアイデアを支援者になりそうな人に説明することです。
現実的には、なにかの会話の時に面白いビジネスを企画していることを伝えるというケースが多いです。それを想定して15秒位で話せるようにしてください。

効果的に会話に入れ込むためには説明を暗記しておくべきです。最初の15秒で相手が少しでも話を聞いてくれたら、次の15秒で、その理由や試行実施もしていて、良い評価が得られていることを伝えます。実際ちょっとした雑談から支援者やパートナーが見つかることは多くありますし、また必要なパートナーを紹介してくれることもあります。

 

(2) 事業の概要

この部分では、ビジネスコンセプト(誰に・何を・どのように)を丁寧に記載します。
ターゲット(誰に)に対して何(製品やサービスの価値)を提供するのかについての理由も記述してください。繰り返しになりますが、実際の試作品や試行サービスの提供の評判がキーポイントになります。その根拠となる、ターゲット顧客のニーズがあることも記述してください。

(3) 市場分析

第5回で検討した、市場動向について説明します。
B2Bビジネス(消費者向けではない事業者向けのビジネス)の場合には、販売先として潜在顧客がどの位ありそうかを記述してください。また、市場が成長するのか否かも記述します。

(4) 事業(展開)戦略

この項目では事業を成長させるための戦略を記述します。事業戦略とは目標を達成するためのシナリオで、施策や経営資源の配分に関する方針です。

例えば、長期計画として売上〇〇億円&利益□億円、中期計画として、2年目で黒字化&3年目で投資額回収などといった目標を掲げます。そして、その実現のために必要ないくつかの施策、付属サービスの開始、販路の拡大、営業人財の採用、生産設備増加などの各種投資を必要とする施策も記述します。さらに、人物金などの経営資源をどのように配分してそれを実現するかについても記述します。

実際にビジネスを開始する前の計画ですから、実際にそのようになるとは限りませんが、どのようにヒト・モノ・カネを配分して、黒字化させるか、収益を得るかという事業見通しは必要です。施策を実施するために、その資金準備もしなくてはならないからです。

(5) 収支計画

ここでは、第5回で検討したように、売上・コストの見込みを記述します。ただし、事業戦略と整合していることが重要です。月単位での売上、コスト、利益の計画を作っておくと、社内での進捗状況の管理に活用することもできます。また、予想通りに売上が伸びない悲観的なパターンの計画も作っておくことが重要です。
固定費(家賃・土地・設備の減価償却など)は売上に関わらず一定にかかりますので、どのようなシナリオであれ損失を抑えるには、固定費の削減がポイントになります。

(6) 課題

新規事業を進めるうえでの課題もなるべく記述します。投資の拡大、販路の拡大、サプライヤーの増加、他社との差別化の維持など、いくつかの課題が想定されるはずです。
これらの課題に対して、どのように対処するか、対処できない場合にはどうするのか(撤退も含めて)について関係者と共有します。
外部の関係者にどこまで伝えるかどうかという判断はありますが、内部関係者では課題を明確に共有しておくことにより、課題対策のアイデアも集まってきます。また、容易に指摘されそうな課題は、相手から指摘される前にその説明をしておくことが、あなた自身やそのプランへの信頼度を高めることになります。

2.まとめ

今回は、ビジネスプランの内容を解説しました。まず、サマリーでビジネスコンセプト(誰に・何を・どのように)を伝え、なぜこの事業をするのか、そして実際の試行結果などで成功しそうであることを伝えることが重要です。そして、ビジネスコンセプトや事業を進めるための戦略の説明をし、収支計画や課題も記述して、それを関係者と共有します。
特に、売れそうだと考える根拠(試行提供の反応がもっともよい)、市場の規模、コストや利益の見込みなどについて、なるべく客観的に説明できることが納得性や信頼性を高めます。
次回は、このビジネスプランを実行するための重要ポイントを解説していきます。

著者

矢本 成恒氏

名古屋商科大学経営大学院教授(3つのMBA国際認証校)、日本開発工学会(日本学術会議登録団体)副会長、東京人財育成株式会社取締役、中小企業診断士
NTT持株会社戦略部門担当部長、ベンチャー起業・経営などの実務実績、経営コンサルタントの実務経験と学術研究をもとに、新規事業や企業経営に関する講演や研修を実施している。
東京大学博士(工学)、東京大学卒業、筑波大学 MBA、ハーバード経営大学院(受講生中心教授法プログラム修了)

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