2023年4月号
中小企業がDXを実現する鍵は生成AIにあった!

シリコンバレーレポート

Delta Pacific Partners 川口 洋二氏がお届けするシリコンバレーレポート。今号では中小企業のDX化の鍵を握る?生成AIの進化についてお届けします。

生成AIがDXのキーとなる

デジタル化による業務の効率化は取り組まれているが、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に関しては進展が遅れていると言われている。特に中小企業においては、DXに関する情報や人材、資金不足など、多くの課題があるため、DX化に取り組むことが難しい状況にある。そんな中で登場したのが生成AIである。生成AIは手軽に導入でき、高度なIT人材も必要がない。プログラミング言語やエクセルの数式や関数に詳しくなくても、日本語でわかりやすく指示(プロンプト)を与えることができるなら、生成AIを活用して様々な処理ができる。中小企業がDX化で大手企業に勝つための秘密兵器にもなる可能性がある。

今月10 日、アトランタに本拠を置くメール マーケティング会社 Mailchimp は、生成AIを利用したメール コンテンツ ジェネレーターのベータ版をリリースした。例えば、「この新製品についてメールを書いてください」と依頼すると、生成AIが3つ例を作成してくれる。キャッチフレーズも自分で考える必要がない。人力でメッセージを1つ1つ書くことなく、生成AIを使って自動化できる。低アルコールおよびノンアルコール飲料を販売するロンドンの Club Soda社は、MailchimpのEメール コンテンツ ジェネレーターを使用して、ノンアルコール飲料を好む人など潜在顧客をセグメント化し、ターゲット化したメールを送信することを検討している[i]

[i] https://www.inc.com/sarah-lynch/3-new-generative-ai-tools-that-may-save-small-business-owners-time.html

活性化する生成AI関連、ユニコーン企業も誕生

今月7日には、ウェブホスティングのGodaddy社は中小企業向けに、生成AIプロンプト(AIへの指示文)ライブラリを発表した[i]。生成AIはキャッチコピーを作るマーケティング担当者やブログ作成のソーシャルメディア担当者等、様々な専門家として利用でき、Godaddy社はそのための指示の文例集を提供する。例えば、生成AIをマーケティングのコピーライターとして活用、より効果的に見込み客を顧客に変えるための製品説明の書き直しを指示するための文例が提供されている。

他に、生成AIをビジネス・コンサルタントとみなし、競合他社の分析をまとめ、価格設定と市場でのポジショニング、ブランディング、メッセージの各項目について、競合他社間の相違点と類似点の評価を依頼する文例が示されている。さらに、すべての情報に基づいて、自社が競合他社に対してどのように改善できるか案を示してもらう指示文も用意されている。さらに、生成AIを腕利きの営業担当者とみなし、ある製品の潜在顧客の購買を促す切迫感を生み出すための 5つの戦術を提案してもらったり、カスタマーサポートのコーチとして、ある製品に不満を表明した顧客への返答方法等を教えてもらうためのプロンプト例等が用意されている。

生成AIのソリューションやA Iモデル等を提供するスタートアップも台頭し、ベンチャーキャピタルも投資を活発化している。PitchBook のデータによると、2023 年第 1 四半期には 46 件の投資案件があり、106 億 8000 万ドル相当(約1兆3千億円)の投資計画が発表され、約 17 億ドル(約2千2百億円)の投資が完了した[i]。3月にはチャットボット作成サービスのCharacter.AI社が最初の株での資金調達(シリーズA)で1億5千ドルの資金調達を集め、久しぶりのユニコーンとなった。

[i] https://www.godaddy.com/garage/ai-prompts-for-small-business/

[i] https://pitchbook.com/news/articles/Amazon-Bedrock-generative-ai-q1-2023-vc-deals

インターネットにも相当する生成AIのインパクト

企業が生成AIを取り入れる必要がある理由として、多くの人がChat GPTを使っていることが挙げられる。その注目度はインターネットにも相当する、と言われ、ブロックチェーンやWeb3とは次元が異なる。今後、個人でChat GPTを利用する機会が増えるにつれ、AIで何ができるか知ることになり、企業への顧客の要求度が高まることが予想される。パワーポイントの資料を作るのに、2、3のキーとなる文からスタートしてプレゼンテーションのアウトラインを作ってくれる生成AIサービスを利用し、さらに画像生成AIでストーリーラインにあった画像を生成する、といったふうに、複数の生成AIサービスを駆使する個人も出てくるだろう。パーソナライズされたEメールも自動作成できる。そんな中、昔ながらの会社紹介パワーポイントだったり、会社が同じ内容のメールを一斉配信しては呆れられる。コンピューターのサポートボットの活用、顧客による質問、不満への回答内容、対応スピード等についても、顧客の要求度が上がるだろう。導入が簡単、安価だから、人材不足や資金不足は言い訳にならない。

中小企業こそAI戦略を

この半年でAIは、現代のビジネスにとって不可欠なものとなった。米国のベンチャーキャピタルは、あらゆるスタートアップがAIを活用すべきだと考えている。そして、それは中小企業にも同じことが言える。中小企業は、AI戦略を持つ必要がある。中小企業がAIを戦略的に活用することで、市場競争力を強化することができる。マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、4月22日のNHKの単独インタビューで、日本市場について「私が最も期待しているのは中小企業であり、AIとChatGPTの技術は、人手不足など中小企業が直面する課題の解決につながる」と述べている[i]

中小企業は生成AIを活用することで、未来に向けたDXを後押し、事業の拡大につなげることができる。

(以上)

[i] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230422/k10014045711000.html

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